血液のがんである白血病の中で、急速に症状が進むのが急性骨髄性白血病です。
以前は治療の難しい病気でしたが、タイプによっては5年生存率が6割を超え、完治も見込めるようになっています。
【白血病とは】
血液の成分である白血球や赤血球、血小板のもととなっているのは骨髄にある「造血幹細胞」 です。
白血病では、この幹細胞からがん細胞ができ、正常な白血球などができなくなります。
白血病の中でもがん細胞が急激に増えて正常な細胞が作られなくなるのが急性で、徐々に進行するのが慢性です。急性、慢性それぞれに骨髄性とリンパ性があります。
【急性骨髄性白血病とは】
急性骨髄性白血病は、白血病細胞が急激に増えます。患者の体内では白血病細胞が1兆個以上も存在し、約1キログラムの重さにも達するといわれます。正常な細胞が育つ余地がなくなり、白血球や赤血球、血小板が減少します。この結果、さまざまな細菌やウイルスに感染しやすくなります。最初は風邪に似た症状が出ることがあります。
国内の急性骨髄性白血病の患者数は10万人あたり3〜4人程度と言われています。成人の白血病では最も発症頻度が高く、発症原因はよく分かっていませんが、遺伝する病気ではなく、周囲に感染もしません。
【急性骨髄性白血病の治療】
急性骨髄性白血病は大きく8つのタイプに分類できますが、「現在では遺伝子異常などでさらに細かく分けることができる」、といいます。(大阪赤十字病院の通堂満・副院長)
そして、この分類にしたがって、治療方針を決定します。
治療の成績はタイプによって異なり、5年後の生存率が60%以上のタイプもあれば20%以下のタイプもあります。成績がよいのは急性前骨髄球性白血病で、このタイプだけに効く「レチノイン酸」(活性型ビタミンA)をまず服用します。
◆ 通常は、血液細胞の回復がみられる「寛解」という状態を目標に、最初に抗がん剤を投与し、白血病細胞を10億個以下に減らします。「寛解」で治療をやめると再発する恐れが高いため、次に「地固め療法」としてさらに抗がん剤を投与し、最終的に白血病細胞をゼロにすることを目指します。
◆ 抗がん剤で治療しても再発する場合は、造血幹細胞移植などを検討します。抗がん剤の大量投与などで異常な細胞を破壊してから、正常な造血幹細胞を移植する治療です。その一つである骨髄移植は、兄弟姉妹などから提供を受けた骨髄を活用します。白血球の型(HLA)が合っていることが基本で、兄弟姉妹で一致しない場合は、骨髄バンクなどを活用し、一致する人を探します。
◆ この他に、へその緒から採った臍帯血(さいたいけつ)を移植する方法や、血液中に流れ出てくる造血幹細胞を取り出して移植する末梢血(まっしょうけつ)幹細胞移植という方法もあります。
細胞移植で最近増えているのが「ミニ移植」と呼ぶ方法です。移植前に投与する抗がん剤などの量を減らし、患者の負担を通常の細胞移植より減らすことを狙っており、高齢者や臓器に障害がある人にも適用しやすい利点があります。
どの方法を選ぶかについては、担当する医師とよく相談して決めることが大切です。
急性骨髄性白血病の治療法は進化しており、以前と比べ選択肢も広がってきました。「回復が難しい病気といわれてきたが、今は完治も十分視野に入る」と専門家は口をそろえます。