「痔:苦しまないために 治療→切除せず注射普及 予防→長く息まず/寒い冬 血行に注意」
寒い冬は血流が滞り、痔(じ)が悪化しやすいといわれています。痛みがないタイプもあり、放置しがちになります。
治療が遅れれば、腫れたり出血したりして生活に支障が出てしまいます。ただし、生活の工夫で予防しやすく、
治療でも切除手術をしなくて済む方法が普及してきました。痔は日本人の3人に1人が患う身近な病気です。
【痔の3タイプ】
◆いぼ痔(痔核)。肛門の皮膚や粘膜の支持組織、周囲の血管が緩んでできる。全体の6割強を占めます。
◆直腸側の粘膜にできる内痔核
◆肛門側の皮膚にできる外痔核
このうち悪化しやすいのが内痔核。肛門近くの血管が鬱血して直腸の粘膜を押し上げ、いぼ状に膨らみます。大きくなると排便時に肛門の外へ出る。
排便後には肛門の中に戻るが、症状が進むと外に出たままになる。直腸の粘膜には痛みを感じる神経が無く痛みを覚えませんが、痔が腫れたり出血したりします。
【内痔核の予防法】
◆正しい排便習慣と肛門を清潔に保つことが大切です。
◆排便時に力を入れるのは1回当たり5~10秒がメド。頻度は2日に1回から1日2回程度が適切です。
◆便秘や下痢が続くと良くありません。食生活や睡眠のリズムを整えることも大事です。
◆朝食後に排便したら、温水洗浄便座やシャワーで肛門を洗うと、次の排便まで比較的長い時間、肛門を清潔に保てます。
◆冷たい床にそのまま座らない。
◆長時間座っていたり立っていたりすると鬱血するため、時々軽い体操をする。
◆入浴時に湯船につかると血行がよくなり鬱血しない。
【痔の治療方法】
◆排便時に肛門から痔が出ても自然に戻るようなら、座薬や軟こうで対処。
◆重症の場合。これまでは痔の切除手術が一般的でしたが、最近は痔に薬剤を注射して血流を遮り、
固めて小さくする「ジオン注射療法」と呼ぶ治療法が普及してきました。
【ジオン注射療法】
切除手術に比べて再発率がやや高いですが、再発しても繰り返し注射が可能。
局所麻酔で治療でき、治療中や治療後の痛みも軽い。入院期間も2~3日と手術の3分の1程度で済む。
日帰りで治療するケースもあります。
いぼ痔以外には肛門の皮膚が裂ける切れ痔(裂肛)と、肛門の周囲が化膿(かのう)して腫れる痔瘻(じろう)があり、
全体の3割を占めます。男性は痔瘻が多く、女性は切れ痔が多い傾向があるといいます。
【切れ痔の症状と予防】
◆切れ痔は便が硬く太い場合や下痢の時に肛門が傷んでできる。便秘では傷が治らないうちに再び傷つく。
繰り返すうちに組織が硬くなり傷が治りにくくなる。傷が深くなると肛門周辺の括約筋に達することもあります。
◆切れ痔の予防は、食生活のバランスや睡眠のリズムが重要です。体調を整えて便を適度な固さにする。
軟こうや座薬での治療が多いですが、慢性化すると肛門周辺の皮膚が硬くなり肛門が狭くなるため、
括約筋の一部や硬くなった皮膚を切り肛門を広げる手術をすることがあります。
【痔瘻の症状と予防】
痔瘻は肛門近くにある「肛門腺」に腸内の大腸菌が入り込み、感染して起きます。絶えずうみが出て慢性化し、肛門の周りが腫れて激しい痛みを伴います。
手術で取り除くのが一般的です。昔は肛門の周りの括約筋をすべて切り開いていましたが、
現在は肛門腺を切り開いて肛門につなげるなどの部分的な手術だけで済み、括約筋の機能も保てます。便の中の大腸菌が原因のため予防が難しいですが、
大腸菌による感染は常に起きており、免疫力で感染拡大を防いでいるとの見方もあります。食生活や睡眠に気を配り、免疫力を高める工夫をしましょう。