梅毒は、15世紀の米大陸到達を起源に欧米に広まり、その後全世界で急速に感染が拡大したといわれています。
「梅毒とレポネーマ」と呼ばれる細菌が全身に感染します。性行為の際に、皮膚や粘膜からうつるのが一般的です。性器や周辺の皮膚に感染すると、約3~4週間の潜伏期を経て感染した部位に大きさ1 センチメートル程度のしこりが出来ます。痛みなどは感じない場合が多く、本人が気づかないこともあります。
【梅毒の症状】
しこりができてから1~2ヶ月後に、血液にのって菌が全身に回ります。全身の皮膚に赤い発疹ができたり、発熱や関節痛などが生じたりします。菌に よって脳や神経などが侵され、目がぼやけたりめまいがしたりすることもあります。最悪の場合は死亡します。妊婦が感染すると胎盤を通して胎児にうつりま す。成長期の子供に、角膜炎や難聴、特有の歯並びなどが現れます。
【梅毒の患者が目立ち始めました】
治療しなければ怖い病気でうが、1940年代に特効薬のペニシリンが開発されました。以降、世界中で梅毒の患者数が激減しました。日本では錠剤が 普及しており、初期であれば2週間飲み続ければ完治します。薬が効かなくなる耐性菌もまだ出ておらず、薬の効き目は高いです。脳などが侵されるまで進行す ることもまれです。
ところが、克服したと思われた梅毒の患者が最近目立ち始めました。
国立感染症研究所によると、国内の患者数は2010年以降、3年連続で増加しました。10年は621人だったのが13年では1226人と、約2倍 になりました。患者の8割は男性で、特に20~30代の若年層の伸びが目立ちます。専門家の間では潜在的な患者はもっと多いとの見方が強いです。
【増加の原因】
近年の梅毒患者の増加の原因として専門家が指摘するのが、男性同士の性的接触です。感染研の調査では、推定感染経路の半数が同性間性的接触で、この比率が高まっている傾向にあります。
【治療法】
性感染症ではエイズがよく知られています。かつては死を意味する病気でしたが、治療法の進展で適切な治療さえすれば、通常とほとんど変わらない生活を送れるようになりました。
この結果、梅毒や淋病、性器ヘルペスなど性感染症全般への警戒心が薄れがちになっているようです。梅毒に感染した場合、傷からエイズウイルスに感染しやすくなります。エイズを発症すると、体の免疫機構が弱くなるため、梅毒の治療も難しくなります。
ただ、梅毒を一部の人の病気を考えるのはよくありません。性感染症は男性から女性に、またはその逆のルートでもうつります。性行為をすれば、感染の可能性があると考えてください。
梅毒の原因菌に感染しても症状が出ないケースもあり、気づかないうちに広まりやすいです。
【ためらわず検査を】
感染の予防や拡大防止で重要なのは、性行為の際にコンドームを用いることです。ただ、菌は皮膚や粘膜にできた潰瘍から出る液に含まれており、口の中にも存在するため、コンドームで感染を完全に防げるわけではありません。不特定多数との性交渉を避けることが望ましいです。
感染の有無は検査を受ければわかるので、ためらわずに受けて欲しいと専門家は口を揃えます。
血液を採取して抗体を調べる方法が主流です。結果はおおむね1週間でわかります。感染してから抗体ができるまでの間は検査しても見つからないケースも頭に入れておきましょう。
感染している場合は、パートナーにもうつっている可能性があるので一緒に検査をしてください。
特に子供に影響が出る妊婦は要注意です。
感染して進行すると3ヶ月間も薬を飲み続けなければならなくなる場合もあります。病気の発覚をきっかけに家庭崩壊につながる恐れもありますが、放っておくと家族の命にかかわりかねません。
早めに検査をし、治療することが肝心です。