高齢になると筋力が衰え、短い距離を移動するのも一苦労。そのうえとても疲れやすい。老化現象だと高齢者の多くが半ばあきらめていた症状を、日本老年医学会が「フレイル」と名称を統一し、予防の必要性を指摘する提言を5月にまとめました。
専門家は、適切な運動と食事を心がければ「要介護状態に陥るのを防げる可能性がある」と対策を呼びかけています。
【フレイルとは】
高齢者が介護が必要になる手前の段階。英語で虚弱や老衰などの意味を指す「Frailty」をもとにした概念で、日本老年医学会が考案しました。
歩く速度が落ちたり、体重ががくんと減ったりして日常生活を送るのに必要な体力が衰えてしまい、何の対策もとらずにいると、75歳以上の後期高齢者の多くがこの段階を経て、要介護状態に徐々に近づきます。
国内ではまだフレイルの正式な評価表はなく、独自の評価表づくりに現在取組中です。
【フレイルの評価表(米老年医学会の基準)】
1. 体重が減少
2. 歩行速度が低下
3. 握力が低下
4. 疲れやすい
5. 身体の活動レベルが低下
これら5つのうち、3つが当てはまるとフレイルとみなされます。
※ 日本では、記憶力の低下なども考慮した評価表を検討中
【フレイルの主な予防法】
適度な運動と食生活の組み合わせが欠かせない。
但し、食生活については糖尿病などの持病がある人は悪化しないように注意が必要です。
・ウオーキングなど適度な有酸素運動をする
(1日5,000歩を歩き、そのうち7分30秒は早歩きすると効果がある)
・肉や魚、乳製品、大豆などの良質なたんぱく質やビタミンなどを豊富に含む食事をとる
・トレーナーの指導の下で適度な筋力トレーニングをする
・感染症にかからないようにする
・手術後は早めにリハビリをする
・6種類以上の薬を服用する人は医師と相談する
注)荒井・京大教授の話しなどをもとに作成
参照)一般社団法人 日本老年医学会ホームページ http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/
フレイルに似た概念では、年齢とともに筋力が落ちる「サルコペニア」や、運動機能が低下した状態になる「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群、ロコ モ)がありますが、ロコモは、メタボリックシンドローム(メタボ)に続いて、世間でも徐々に知られるようになってきました。「フレイル」も統一名称を用 い、予防の大切さを分かりやすく訴えることで、認知度が高まっていくと思われます。