【気胸とは】
肺の表面が部分的に膨らんだ「ブラ」と呼ぶ袋が破れて起こる症状です。呼吸で吸い込んだ空気が穴から漏れ、肺が縮んで息苦しさを覚えます。肺が周囲にある胸壁から離れて縮む際に神経を刺激するため、胸の痛みも出るといいます。
どんなときにブラが破れるのかなど未解明な点もありますが、精神的なストレスや睡眠不足が原因になっていることが多いようです。
【気胸の主な原因】
■若い男性に発症が多い理由
体と肺の発育のバランスが崩れブラが多くできるからだと考えられています。特に身長が高いやせ形の人は、肺が収まるスペースが縦に細長く、肺の上部で肺の外側と内側の圧力差が大きくなってブラができやすいのです。
■高齢者の発症理由
気胸は高齢者でも発症します。たばこの吸い過ぎなどで起こる慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎などの病気が影響する「続発性気胸」と呼ぶタイプです。最近では、高齢化社会になり、患者数も増えてきています。
■女性の場合
また女性では、毎月の月経に伴って症状が出る「月経随伴性気胸」があります。肺や横隔膜に張り付いた子宮内膜の一部が、月経ではがれ落ちることで穴が開くと考えられています。
【気胸の症状】
痛みが起こる場所は胸に限りません。肩や胸、背中など人によってさまざまです。
多くの場合で息苦しさを伴います。痛み自体は数分でおさまっても、その後に息苦しさ が続くなら、気胸を疑ったほうがよさそうです。
逆に本人が気胸だと思っても、実際には肋間(ろっかん)神経痛や筋肉痛の場合もあります。
呼吸器外科などを受診 し、レントゲン検査などを受ければ通常、気胸かどうかわかがわかります。
【気胸の治療法】
肺にあいた穴は、小さければ自然に塞がることも多いです。このため軽症で肺があまり縮んでいない患者では、気胸とわかっても安静に過ごすという治療を選ぶ例もあります。
一方、大きく縮んでいる場合は「胸腔(きょうくう)ドレナージ」と呼ぶ治療が選択肢となります。胸部にチューブをさして肺と胸壁の間にたまった空 気を抜き、数日かけて肺を元の大きさに戻します。入院治療が基本ですが、小型の器具を使い通院で治療することも可能になっています。
根治を目指すならば手術になります。内視鏡の一種である胸腔鏡を使い、胸に小さな穴を複数開けて手術をします。破れたブラを切り取って肺を縫い縮めるが、それだけでは縫った周辺の組織に力がかかり新しいブラができて気胸が再発する恐れがあります。
このため「カバーリング」という手法が普及してきました。ブラを切り取った部分に網目状の膜を貼ります。この膜は体内で自然に溶けてコラーゲンに置き換わり、肺を補強して再発を防ぐ仕組みです。
医師は患者の状態や年齢などをもとに、いずれかの治療法を選びます。たとえば、20代で2回発症した人は9割近い確率で3回目の気胸を起こします。手術をすれば、確率を1割以下にとどめることができるのです。
高齢者では一般的に手術が難しく、胸腔ドレナージで対処する例が多かったですが、近年は破れた場所を特殊なのりで固めたり、肺全体をフィルムで覆って再発を防い だりする方法も登場してきています。そのため医師とよく相談して治療の進め方を決めることが大切です。