食べ物が美味しい季節がやってきました。
しかし、さまざまな原因で味覚を感じにくくなったら、そんな「食の楽しみ」も色あせてしまいます。近年、味覚障害の患者さんが増えています。
【 味覚障害とは 】
私たちは、舌の縁の表面や上顎(軟口蓋)に約1万個ある「味蕾(みらい)」という小さな器官で、口に入った食べ物の味をキャッチしています。味蕾は甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などを感じ、その情報は顔面神経を介して、脳の味覚中枢へと伝わります。
しかし、舌から脳まで味の伝わる経路のどこかに問題が起これば、食べても味がしないなどの症状が出てしまします。味覚障害の患者数は少なくとも20万人以上で増加傾向にあると言われています。
味覚障害が疑われる場合、まず、検査で原因を探ります。
例えば「ろ紙ディスク法」では、さまざまな濃度の味をしみこませた小さなろ紙を舌に乗せ「舌のどの部位が、どれぐらい味覚を感じるか」を確認。電気刺激で味覚を感じる舌の神経の反応の強さも調べます。
【 味覚障害の原因:脳のトラブル 】
■ ストレス
精神的ストレスが強いと、舌は問題なくても、味を感じられないことがある
■ 脳梗塞の後遺症など
脳の味を感じる部分に障害が残ると、味を感じにくくなる
【 味覚障害の原因:神経のトラブル 】
■ 親知らずの抜歯・扁桃の手術
抜歯や切除手術で神経がダメージを受け、舌の一部の味覚に異常がおきることがある
【 味覚障害の原因:舌のトラブル 】
■ 亜鉛不足
亜鉛が足りないと味蕾がうまく働かなくなる
■ 唾液分泌量の低下
老化やドライマウスなどで唾液が減ると、味の成分が味蕾に届かない
■ その他
口の中にカビなどが増える、歯科治療の金属の影響
【 味覚障害の予防法 】
・バランスのよい食事:ファーストフードや炭水化物中心の食事は亜鉛不足を招きやすい
・食事は仲間と楽しく:楽しい会話は唾液を出やすくし、味を感じやすくする(特に高齢者)
・飲んでいる医薬品を確認:亜鉛の吸収を妨げる薬は多い((例)血圧を下げる薬、抗生物質、抗うつ薬、消炎鎮痛剤など)。味の異変を感じたら医師や薬剤師に相談を。
味覚障害が進行すると食という生活の彩りを失ってしまいます。味に不安を感じたら早めに医師に相談するとともに、生活改善に取り組むことも大切です。
亜鉛の1日「推奨量」は成人男性で10ミリグラム、女性8ミリグラムですが、ファストフードや加工食品に頼っているとこの量は取りにくい。カキ、牛肉、大豆など亜鉛を含んだ食材を積極的に取り入れることが大切です。
亜鉛不足解消のために既にサプリメントを飲んでいる人でも、きちんと吸収されていない事が多いため、亜鉛のサプリメントは医師と相談し使用することをお勧 めします。精製された穀類はほとんど亜鉛を含まない上、最近では食品添加物が亜鉛不足の原因になることも分かってきています。いたずらにサプリメントの量 を増やすより も、日常の食生活を見直しましょう。
味覚が育つ前の子供が加工食品ばかり食べていると、知らず知らずのうちに味覚音痴になり、偏食の原因になる可能性もあります。旬の食材を取り入れるなど、一手間かけた料理を食べさせる「味の食育」は、若い世代の味覚障害予防につながります。