話題の“菌活”“育菌”で、腸に続いて注目なのが肌の「皮膚常在菌」です。菌バランスを整えることで肌を良い状態に保てると期待されています。菌の状態を調べる検診や、「美肌菌」を増やす化粧品も登場しています。
「美肌菌」として注目を集める表皮ブドウ球菌は、皮脂や汗を食べて、グリセリンや有機酸など、皮膚に有益な成分を生み出すします。一方、食中毒の原因菌でもある黄色ブドウ球菌は、皮膚の調子を崩す悪玉菌といわれています。
顔に住む皮膚常在菌は約10億個。皮膚表面の角質の中や毛穴にいるとされています。顔のほか、頭皮、わき、陰部、足裏も多く、腕などは少ない。
【皮膚常在菌は角質・毛穴にいる】
・表皮ブドウ菌
グリセリンを作ります。酸を作り肌を酸性に保ったり、抗菌ペプチドを作り出すことで、黄色ブドウ球菌の増殖を防ぎます。
・黄色ブドウ球菌
1カ所で異常増殖すればひびの原因にもなります。アトピー性皮膚炎患者の場合は、悪化時に激増します。健常者の9割には存在しません。
・アクネ菌
酸素を嫌う嫌気性菌で、毛穴や皮脂腺に住むニキビの原因になる菌とならない菌があり、いずれも肌を酸性に保つ役割を果たします。
・マラセチア菌
正しくは真菌(カビ)・酵母の一種。ニキビ様のマラセチア毛包炎や、脂漏性皮膚炎による頭皮のフケ、かゆみを引き起こします。
そこでまず、自分の皮膚常在菌の現状把握から始めようというのが、自由診療の肌検診「美肌菌ドック」。表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、ニキビの原因となるアクネ菌の量を調べ、ほかの肌質検査の結果と併せて、医師らがスキンケアを指導します。
【菌バランスを整えるには】
(1)菌バランスを崩すスキンケアをやめて美肌菌の自己増殖を待つ
化粧品を使わない「肌断食」や、“殺菌成分”である防腐剤を含まない「無添加化粧品」などが該当します。
(2)美肌菌が生み出す有益な成分を肌に塗布して菌の活動後のような肌状態にする
保湿成分のグリセリンを配合した一般的な化粧品なども相当します。
(3)自分の美肌菌を外部培養して戻す
実用化したのが「美肌菌バンク」です。人によって定着する菌は異なるため、自分の顔の表皮ブドウ球菌を採取、培養します。菌は凍結保管され、好きな機会に取り寄せられます。
(4)美肌菌のエサを肌に塗布する、の4つの方法がある。
【美肌菌ドック】
皮膚常在菌量のほか、約130項目の問診に加えて肌について20種類の検査し、肌質を把握します。約1カ月半後に結果が分かります。
こうした動きの背景には、皮膚疾患と皮膚常在菌の研究の進歩があります。アトピー性皮膚炎患者の8割以上は黄色ブドウ球菌を保持していると言われています。
動物実験から、遺伝的に皮膚増殖因子が欠損していると黄色ブドウ球菌が極端に増えてアトピー性皮膚炎を引き起こす ケースがあると分かりました。
ニキビでは、皮脂分泌が盛んになる頃にニキビにならないタイプのアクネ菌を植え付けてニキビを防ぐ研究も始まっています。ただし肌に関わる菌種は多く、特定菌種を増やしても無意味との指摘もあります。
【こんな行動は表皮ブドウ球菌を減らす】
・長時間の入浴や半身浴、岩盤浴
・ピーリングやアカスリ、スクラブ、シャービングの多様
・顔の洗いすぎ、洗顔料の使いすぎ
・防腐剤や殺菌成分を多く含む化粧品類の使用
・レーザーを使った美容医療
表皮ブドウ球菌は角質に住むため、角質を落とし過ぎることが減らす原因になります。肌をアルカリ性に導く汗や、殺菌効果がある物質もNGになります。
石けん洗顔で皮膚常在菌は減りますが、12時間ほどで回復すると考えられえいます。しかし洗顔回数が多いと回復できなくなります。