「朝晩の指のしびれ 手根管症候群の恐れ」

投稿日:2013年6月14日|カテゴリ:医療コラム

【手根管症候群とはどんな病気】
手根管症候群は手首にある手根管というトンネルに圧力がかかり、この中を通る正中神経が圧迫されて、手の指にしびれや痛みが症状として表れる。

【主な症状】
主に夜中や朝方の寝起きに指がしびれる症状で、親指、人さし指、中指、薬指にしびれが出るのが他の障害によるしびれとの大きな違い。多くは両手の指にしびれが起きるという。
ただ、なぜこうした症状が起きるのかという原因はほとんどわかっていない。
主な症状が指のしびれだけなので、日常生活にそれほど支障はない。しかし、指のしびれをそのままにしておくと、仕事や家事で手や指を激しく使った り、手首を骨折したりすると症状が悪化しやすい。重症になると、神経への圧迫が続き、手や指のしびれで目が覚める、鋭い痛みを感じる人もいる。そのまま放 置していると、親指の付け根の筋肉が萎縮し、物をつかめなくなる。筋力もしびれも完全に回復させるのが難しくなる。
年配の患者はしびれに慣れ、あまり強く症状を訴えない場合がある。老化と勘違いしている人も多い。実際、症状を自己判断するのは難しい。

【原因】
ほとんどが原因不明の突発性。分かっているのは、年配の女性に多く、妊娠中の女性なども発症しやすい。女性に多いので、ホルモンに関係するという意見もある。

【検査と診断】
手首を曲げる、手のひらをたたくといった判断方法もあるが、人によってしびれ具合が違う。今は機械を使って手首の筋肉を動かす信号の伝達速度を計測して客観的に判断するのが確実な診断方法。
まずは、専門の病院で診断を受けるのが大切。

【治療法】
症状が軽い場合は、手首を固定する装具をつける保存的治療が一般的。
手首に過度の負担をかけず様子を見ると、自然と手根管への圧力が収まるケースも多いという。
他にも、手根管にステロイドを注射する方法やビタミンB12などの薬剤を処方する方法もあるが、重症化している場合は効果が長続きせず、再び発症する人も多い。
保存的治療の効果が薄い人の場合には手術が必要となる。特に手首に腫瘍がある場合や透析などが原因の場合は神経の圧迫がさらに進む可能性があるため、早めの手術が勧められている。
手術は圧迫されている手根管を切り開いて中の圧力を下げる手根管開放術と呼ばれている。局所麻酔をかけて手根管の上の靭帯を切って正中神経の圧迫を取り除く。
最近は手の中に内視鏡を入れる「鏡視下手根管開放術」や手のひらを小さく切る「直視下手根管開放術」が多い。手の傷も2〜3センチ程度で済むた め、傷痕も目立たないで済む。手術時間も30分程度で、日帰りでできる。ただ、手術したからといって、すぐにしびれが消えるわけではないこと。しびれが取 れるまで数週間から数ヶ月かかることもある。

【注意点】
手術をしても、しびれを長年放置してしてきたなど重症化していた人は治るまで数年かかる。完全にはしびれが取れないこともある。
また、手術時間も短く大規模な手術ではないが、靭帯を切り開くため熟練の技術が必要です。きちんと整形外科の専門医がいる病院で治療を受けることが重要。
その上で、まず専門医のもとで機器を使った正確な診断を受け、症状の軽重をふまえ、医師とよく話し合って治療法を選択することが大切。